キックボクシング初心者のアラフィフおじさんが試合に出るまで③

キックボクシング初心者のアラフィフが試合に出るまで

前回の記事

「形から入るタイプ」の中年おじさんがキックボクシングのアイテムを大人買い

若かりし頃はできなかった大人買いで、テンションが上がる!

キックボクシングにハマっていくアラフィフが、散財しながらも強くなっていく物語。

講座になじんで本格的に取り組む

おっさんの心は折れるどころか、より強くなっていた

今までの自分なら「この年で恥かく必要ないでしょ」とさらっと辞めてたかもしれないが、苦節25年のサラリーマン人生の知見によって、「恥や失敗を燃料にして人は成長すること」を知っているわたしは前に進むことを決意する。

結果として、今までのように他の講座に浮気することなく、同じ講座の同じ先生に教わることになる。

参加者は毎回5名くらいで、ほとんどがそこの柔術教室の生徒ということもあり、相変わらず浮いてはいたが、会話する機会は徐々に増えていった。

当然ながら、わたしのようなストアカからの新参者が2~3回のうち1回くらいの割合で参加してくる。

新参者と言っても空手やボクシング経験者もいるし、女性もいるし、初心者もいるわけだけど、彼らにわたしはどう見られているのか?

  • その他の諸先輩方と同じベテランとして見られているのか?
  • 同じ新参者の同志と思われているのか?

そんなしょーもないことを気にするようになってしまった。

講座はミット打ちをみっちりやることが多い。講師が参加者のミットを打ちを1時間かけて順番で受け続けるというシュールな内容。

当然講師は1人だけでサンドバッグもなにもない道場なので、1人がミット打ちしているときは他の参加者に見られることになる。

この「見られる」ことが、いつしかわたしにとってプレッシャーになっていた。

諸先輩方が繰り出すミットを打ち抜くパンチの音、空間を切り裂くミドルキックの音が、わたしを追い込んでいく。

そのときは「バチンバチンとデカくていい音が鳴ること」が正義だと思い込んでいたわたしは、すべての打撃をフルパワーで繰り出していく。

1時間のうち1分半のミット打ちが6~7回くらい回ってくるが、わたしだけ常に「ぜぇぜぇ」しているような気がしていた。

とにかく他人からどう思われているかを過剰に気にして、ある意味、追い込まれた状態になっていたのだろう。

グローブやレガース、ファイトショーツを格闘技ブランドで揃える

そんな「精神と時の部屋」のような重力3倍の時間を重ねていくうちに、わたしもいっぱしのキックボクサーのような動きができるようになっていた。

そして、少し余裕が出てくると変な色気がでてくるのが、人間のサガ。

諸先輩方の中にフランスの格闘技ブランド「VENUM(ベノム)」で全身をコーディネートしている70歳くらいの猛者がいて、かっこよかったのでわたしもVENUMのラッシュガードとファイトショーツを2セット大人買いして、3万円くらい散財することに。

ちなみに上下セットをVENUMに揃えて、家で着てみたら何とも言えない高揚感に包まれた。

「あれ、なんかオレ、かっこいいかもしれない・・・」

入場シーンをイメージして、和室を歩いてみたり、軽くシャドーボクシングしてみたり、もう完全にゾーンに入っていたようだ。

こうなるとさらにテンションが爆上がりして、おじさんの大人買いは終わらず、グローブやバンテージ、移動用のバッグなど爆買いする始末。

総合格闘技の経験者が勤務先にいた!そして初めてのスパーリング

月に2回くらいのペースで「精神と時の部屋」で修業していたオラ、いや、わたしに転機が訪れる。

勤務先のTさんが総合格闘技でプロを目指していたという情報を入手し、声をかけたところ、一緒に彼が通っているジムで練習しようという話に。

なんて言うか、どんどん「無敗のまま引退する」という夢に近づいているような気がしていた。

さらに、彼は特別な会員?らしく、他の会員がいない時間帯も使えるとのこと。

変に人見知り傾向があるわたしにとって、マンツーマンの方が人目を気にせずに没頭できるのでありがたい。

初めて格闘技のジムで一番驚いたことは、とんでもなくサンドバッグが固いことだった。

調子に乗って普通に蹴りまくってたらスネの皮がむけて出血。

「なんでレガース着けないの?」と言われるが、こちらとしては、「それ、先に言ってよ」となる。

各々身体を温めたあとにリングイン。ミットを持ってもらう。

まあ、わたしとしては「ミット打ちならまかしとけ!精神と時の部屋の修行の成果を見せてやる!」と意気揚々とパンチとキックを打ち込む。

  • 打ち終わりは同じところにいないように
  • 蹴りは「足を相手に放り投げる」イメージで
  • すべての攻撃は全力で打ち込まない。

ミット打ちメインのストアカの指導と違って、より実践的なアドバイスが飛ぶ。なんとなく「それらしく」なってきた気がした。

そのあと、何ラウンドかやったあと、彼から「軽くスパーリングしてみようよ」と提案があった。

もちろんやってみたい気持ちはあるが、やっとことないし、マウスピースもないし、もしなんかあったらどうするんだ!という気持ちが宿る。

明らかにビビってるアラフィフであったが、ジムにはヘッドギアもあるし、「オレは当てないので安心して全力で打ってきていいよ!」というさわやかな笑顔を信じて人生初のスパーリングが始まった。

  • とにかく、わたしの攻撃が当たらない
  • 相手の攻撃が来ないと分かっていても怖くて目をつぶってしまう
  • わたしの頭をトントンする「舐めプ」できるほど相手には余裕があった

初めてのスパーリングは、スパーリングとは呼べない、お遊戯みたな内容であったが、個人的には何とも言えない満足感があったことも事実。

ついにオレもここまで来たか

あえて言えば、スパーリングの内容なんてどうでもいいのだ。

スパーリングを初めてやったことに意義があった。

その後、帰りの電車でマウスピースやレガース、ファウルカップなど、スパーリングに必要なアイテムを大人買いしたことは言うまでもない。

以降、彼とは3回ほど一緒にトレーニングしたが、残念ながら彼は半年後に退職したため、そのままフェードアウトしてしまった。

よく考えれば、格闘技経験者から無料でパーソナルトレーニングを受けているようなものだったので、彼には今でも感謝している。

つづく

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